【藤原かんいち 電動バイク世界一周】
アメリカPart3 ~ ブリッセルコーン ~
私たち夫婦は、アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパ、アフリカ、そして、アジアの国々を旅しました。
使用したバイクは、電動バイク (YAMAHA PASSOL)と、250ccスクーター(YAMAHA MAJESTY)
これは、訪問国43か国、 2004~2008年の足掛け4年(実質旅行期間は983日間)の旅の記録です。
旅のストーリー
電動バイクと250ccスクーターでの私たちの旅は、アメリカ横断から始まりました。
そして、その旅には、世界の巨木に会うこと、という大きな目的がありました。
中でも、日本にいる時から、必ず行こうと計画していた場所が、ここインヨ国立森林公園。
ここには、世界一長寿の木々の森があります。
BigPineという町に滞在し、荷物を置いてからバイクで向かっていったその先の道は、4月の終わりだというのに、まだ閉鎖されていました。
そこは、標高3,000mを超す高地、所々、雪も残っているような場所です。

誰もいない森の中を歩いていくと、こんな奇妙にねじ曲がった枯れ木のような木が、あちこちにあります。
まだ、葉をつけているものもあれば、すっかり枯れ木のようになってしまったもの、その姿はさまざまで、とても神々しく魅力的です。

この木々は、ブリッセルコーンパインという種類の木で、もっとも長寿の木は、樹齢4,800年にもなるそうです。
ただし、どの木が世界一長寿の木なのか、というのは一切、知らされていません。
それは、人間が木を傷つけないように、という配慮からだそうですが、過酷な環境に耐え、長い年月を生き抜いてきた木々が滅びる危険性を持っているのが、人間なのだというのが悲しいです。
この木たちからしたら、人間の一生なんて、ほんのひと時にでしかないのに、同じ地球に生きるものとして、敬意を払わないといけないですよね。
これからも変わらず、この地球を、そして、愚かな人間の営みを見守っていてほしいと願います。
人を包み込むようなオーラと、厳しさに耐え抜いた意思のようなもの、揺るぎない信念と力強さのようなものを放っている長寿の木々が、これからもここに生き続けていくことを願っています。
長寿の木々に別れを告げ、その後向かったのは、デスバレー国立公園でした。

ここは、厳しい山々に囲まれた死の谷は、アメリカで最も暑く、最も乾燥し、最も標高が低い場所。
この谷は、太古の昔は海だったそうで、今も谷底は塩が沈殿しています。
まわりには、カラフルな鉱物が露出する崖、黄金色に輝く山、優美な曲線を描く砂丘群など、見たこともないような景色が広がっていました。
私たちがここに入った日は、その年の最高気温46℃を記録し、昼間はサウナの中にいるようでまったく動くことができませんでした。
本格的な夏になれば、気温はゆうに50℃を超えるそうです。

ナバダ州東部にある化石の森国立公園も、行きたかった場所です。
そこでは、何年万年も前、恐竜とともに生きていたような時代の木々が倒れ、火山灰で覆われ、長い年月を経て化石となり、再び地上に姿を現した木々を見ることができます。
その木々は、見た目こそ大木なのですが、よく見ると、光り輝く宝石のようなのです。
たたいてみると、木々の感触とは全く違う、固い鉱石のようになっていました。
本当に、自然ってすごいですね。

まわりを見ていると、私が今まで見たことのある風景なんて、本当に地球の一部でしかないんだな、と感じました。
巨木に会う、という目的で選んだコースでしたが、それは、巨木だけではなく、 地球が生きていると感じさせてくれる、素晴らしい世界でした。
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電動バイク世界一周の旅『誰か充電させてくれ!』
ちょっぴり裏話
世界一長寿の木の森がある近くには、アメリカに10か所あった日系アメリカ人強制収容所のうちのひとつ、『マンザナー収容所』がありました。

資料館を見学し、敷地内をゆっくりと歩きました。

そこは、山から吹き下ろす風が強く、とても過酷な環境だったことがうかがい知れます。
本や写真などでも、あまり知ることがなかったことを、こうして現地に実際に立つことで、とても近く感じることができました。
世界を旅することは、世界を知ること、そして、本当のことを感じることなのかもしれませんね。

長寿の木々の森に行くために滞在していた宿は、本当に居心地のいい、忘れられない宿です。

オーナーは、アメリカ人男性とフィリピン人女性のご夫婦、そして、いとこが一緒に暮らしています。
私が「アメリカはハンバーガーばかりで辛い」と言ったのをかわいそうに思ってくれたのか、野菜炒めとごはんの食事を出してくれたりして、何かと気を使ってくれました。
あたたかいもてなしをしてもらい、 「また来てね、今度は、庭でバーベキューしましょう」と言ってくれて、親戚の家に遊びに来たような気持になる、忘れられない場所となりました。

夫の誕生日に合わせてラスベガスに向かい、おいしいものをたくさん食べました。
資金稼ぎはできなかったけれど、 いい思い出になりました。
また、新たな気持ちで旅を再開です。
藤原かんいちの旅については、旅行家 藤原かんいち Official website をご覧ください。
この動画は、旅をサポートしてくださっていた二輪販売店のための総合サービス会社BDSの中で紹介されていたものです。
現在は、旅行家藤原かんいちとして、BDSの中古バイク情報サイトBBBでコラムなどを書いていますが、この動画はサイトからは公開されていません。
旅をしていた当時はまだ、インターネット環境も整っていず、Wi-Fiはもちろん、スマホもありませんでした。
メールを送ることも至難の業、場所によっては、電話もままならない状況でした。
そんな中、旅先から撮りっぱなしのビデオテープを何本も送り、それを受け取って編集してくださった当時の担当の方たちには心から感謝しています。
動画の撮影は、実際に旅をしながらふたりだけで撮っています。
15年も前にもので、画質も悪く、撮影技術もなく、話も下手で、今見ると、恥ずかしいばかりです。
それでも、この動画を通して、バイクで旅することの楽しさを感じていただけたら嬉しいです。
旅の素晴らしさはもちろん、世界の国々やそこに住む人々に興味を持っていただけることを願っています。