旅の記憶

グラフィックデザインの専門学校で一緒だった彼(今は夫)と再会したのは、卒業して5年後のことでした。

その時の彼は、バイクでの世界一周を計画していて、その夢に向かって迷うことなく頑張っていました。
一方私は、仕事に夢中で趣味もなく、楽しみは、休日のショッピングや仕事終わりのお酒ぐらい。

旅の話をする彼は、地位も名誉もお金もないのに、なんでこんなに目をキラキラさせられるんだろう。
仕事の愚痴や上司の悪口を言いながらお酒を飲むような人たちも多くいる中
彼が宇宙人のように見えました。

私は、彼に会って以来「そんなに夢中になれるものって、どんなことなんだろう…」そう思うようになります。
そして、その夢中になれるものを知りたくて、思い切ってバイクの免許を取ってみようと思います。

そして、無事にバイクの免許を取った私に、彼がかけた言葉は
「せっかく免許を取ったんだから、ヨーロッパだけでも一緒に行かない?」
それは、まったく予想もしていなかった言葉でした。

そして私は、悩んだ末、一緒に旅に出ることを決意したのです。

 

バイクにもアウトドアにも縁がなく、インドアで出不精な私が、自分でバイクを運転して海外を走るなんて
誰も想像することはできなかったでしょう。
もし彼がいなかったら、一生、そんなことには縁がなかったはずです。

チャンスを自分の手で掴むこと、それは、どんなことであれ、小さな決断から始まると思います。

想像できる安定した未来と、まったく想像できない未知の世界へ続く未来!
私は、「どうしてもダメだったら10日で帰ろう」と決めて旅に出る道を選びました。

行くか行かないか、その道を決めるのは、結局、自分自身です。
誰かの人生ではない、たった一度しかない自分の人生。
私は、自分で選んだ道を、自分の足で進んで行きたい、といつも思っています。

だから、選んだ道に後悔はありません。

 

そして、旅に出た私を待っていたのは、本当に想像を超える未知の世界でした。

私が今まで常識だと思って大切にしてきたことなんて、とても小さな世界だけのこと。
そう思い知らされるくらい、驚きと発見の連続でした。

私は、旅に出たことで、たくさんのことを見て、感じて、体験し、考えました。

 

見たこともない景色の中に身をゆだね

ボリビア ウユニ塩湖

アフリカ・ボリビア ウユニ塩湖の上をバイクで走り、キャンプをしました

 

戦争の傷跡が今も残る暮らしを目のあたりにし

ヨーロッパ ボスニア

ヨーロッパ・ボスニア 町中の住宅には弾丸の跡が残ったまま暮らしが営まれています

 

さまざまな環境で生きている人たちに出会います。

アフリカ マラウィ

アフリカ・マラウィ 大きな荷物を頭に乗せ、笑顔で歌を歌いながら歩いている女性達

 

特に印象深かったのは、やはりアフリカでした。

アフリカの人たちは、電気や水道もないような暮らしをしている人々も多いです。
それでも、いつも家族や仲間を大切にして、助け合いながら暮らしています。

そして、彼らと接するうちに、私はこんな風に思うようになりました。

彼らは、確かに不自由な暮らしをしている
でも、彼らより私たちの方が幸せだと、本当に言えるのだろうか

物があっても、便利でも、心が満たされていない人々
物がなくても、不便でも、精一杯生きている人々
彼らより、私たちが勝っていると、なぜ言えるのか

 

そうして私は旅を終えた後、外に目を向け続けるだけではなく、
日本での自分たちの暮らし、普通の日々に目を向けるようになってきます。


【私が夫と共にバイクで旅した全ルート】
Around the world

 トータルすると、バイクで旅をしていた期間は、5年。
バイクで旅した国は、68か国になりました。

【3回の海外バイク旅】

◆ヨーロッパの旅
ヨーロッパの旅

期 間 : 1991年5~12月(7ヶ月)
訪問国 : 22カ国
(フランス・イギリス・アイルランド・ベルギー・オランダ・ドイツ・デンマーク・ノルウェー・フィンランド・スウェーデン・ポーランド・チェコスロバキア・スイス・オーストリア・リヒテンシュタイン・ハンガリー・ルーマニア・ブルガリア・トルコ・ギリシャ・イタリア・モナコ)

◆北南アメリカ縦断の旅

北南アメリカ縦断の旅

期 間 : 1997年7月〜1999年3月(1年8ヶ月)
訪問国 : 19カ国
(カナダ・アメリカ・メキシコ・ベリーズ・グアテマラ・エルサルバドル・ホンジュラス・ニカラグア・コスタリカ・パナマ・コロンビア・エクアドル・ペルー・ボリビア・アルゼンチン・パラグアイ・ブラジル・ウルグアイ・チリ)

◆世界一周の旅

世界一周の旅

期 間 : 2004年3月〜2008年3月(通算3年)
訪問国 : 43カ国
(アメリカ・カナダ・メキシコ・オーストラリア・ニュージーランド・ポルトガル・スペイン・アンドラ・フランス・イギリス・ベルギー・オランダ・ドイツ・リヒテンシュタイン・ルクセンブルグ・スイス・イタリア・スロべニア・クロアチア・ボスニアヘルツェゴビナ・セルビアモンテネグロ・ルーマニア・ブルガリア・マケドニア・ギリシャ・南アフリカ・レソト・スワジランド・ジンバブエ・モザンビーク・マラウィ・タンザニア・ケニア・マダガスカル・トルコ・シリア・イラン・パキスタン・インド・バングラデシュ・マレーシア・タイ・カンボジア・台湾・日本)


私が夫と一緒に海外を旅をしたのは、上記3回ですが、その他に、夫はひとりでも旅をしています。
旅行家として活動し、旅は全て、雑誌・新聞・週刊誌・ラジオ・Web・講演会・写真展などで発表しています。

もちろん、一緒の旅の時は、私も写真やインタビューなどで登場します。
夫の連載の一部にコーナーをもらってコラムを書いていたこともありました。

そして、3回目の世界一周の時に、初めて自分の連載を持たせていただきました。

タンデムスタイル(クレタパブリッシング)
『世界の路から…(フジワラ夫婦の世界一周 出会いと別れと心のふれあい旅)』

旅の始まりから終わりまで、約4年間2ページのコラムを約50回の連載でした。

 

そして、旅を終えて数年。

私がしてきた旅のことや、私が旅をした国のこと、そして、そこに暮らしている人々のこと
それを、もっともっと多くの人に知ってもらいたいと思い始めるようになります。

それは、旅をしていた時に、私たちに手を差し伸べ、無償の愛で支えてくれた現地の人々
笑顔で接してくれた多くの人たちへの恩返しの気持でもありました。

そして、私が決断をして旅という新しい世界に踏み出したこと
新しい世界に飛び込んだからこそ、たくさんのことに出会えたにと

バイクも旅も得意なわけではなかった私だからこその視点で、何か伝えられることがあるのではないか

そう思って、また、旅のエッセイを書かせていただいています。


【旅のエッセイ】

アウトライダー2014年12月号

OutRider(バイクブロス)
2014年12月号より連載中(2page)
『藤原ヒロコの海外バイク旅回想録』
偶数月24日発売

レディスバイク2014年4月号

Lady’sBike(クレタパブリッシング)
2014年4月号より連載中(1page)
『世界を旅したヒロコの話。』
奇数月1日発売